安房鴨川
 
 
 
 
 
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Mr.ポッポの菜の花をめぐる冒険


家を出る頃は曇りだったのに、千葉駅に着く頃にはザーザー降り。散策始まって以来の雨。
電車を一本遅らせて、のんびりと駅弁を選ぶ。次の電車まであと1時間ちかく。今のうちに雨が小振りになってくれないだろうか。そうしているうちに、早めに電車が来た。さっさと乗った。「菜の花弁当」を膝の上に広げる。今日はどこへ行こうか。車窓を眺めて、いい雰囲気のところで降りようか。こんな日もたまには。

僕は安房鴨川まで行ってみた。駅前から前原海岸までは歩いて5〜10分くらい。途中初めて見るバスを発見した。かなり小さいマイクロバス。雨があがったばかりの湿った風が潮のベタつく感覚を余計に強調する。こんな日でも人はいた。しかし、求めるものはなかった。僕は足早に海岸をあとにした。空はまだ曇っていた。

Mr.ポッポはその頃駅にいた。ホームで何やらウロウロ。こうして餌を毎日探している。

雨が降り出した。駅に戻った僕は電車の到着を確認すると、すぐに乗り込んだ。食べ残した弁当をつつきながら「今日ばかりは失敗か」と途方に暮れていた。すると、一羽のハトが車内をうろついている。もうすぐ電車が発車するというのに。餌を求めて乗り込んできたらしい。見兼ねて、食べカスをやると、美味しそうにくちばしを揺らした。
電車はもう走りはじめていた。彼はこの先どうするのだろう。僕の足元でしばらく腰を下ろすことにした彼も、これからの身の振り方に悩んでいるように見えた。
「そろそろ海風は飽きた?」「・・・・・」「一緒に都会でも行ってみる?」
Mr.ポッポは考えた。「参ったな。いつも人が御馳走をくれるこの一時が楽しみなのに。家出したと思ってやがら。ま、都会には御馳走が沢山あるかもしれないけどさ。そう思うと、ちょっと興味が。いや、やっぱりこうして行ったり来たりしてるのが心地よいな。東京は空気が悪いし。さて、じゃあ、捕まっちゃう前に帰るとするか」

「ちょっと記念撮影・・・パシャッ」
Mr.ポッポは突然羽を大きく広げて車内を飛びはじめた。電車はある駅で停車したまま。次の瞬間、開いたトビラの向こうへMr.ポッポは高く飛んでいった。2、3駅ほどの短い旅の折り返し。うたたねしている間に見た夢のようにあっという間の出来事。僕はその時思い直した。「いや、失敗じゃなかったよ」
JR外房線「安房鴨川」駅下車、徒歩5分ほど